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梅が香って水がぬるむと、産卵をひかえたあさりは太ってうまくなる。 夏の浜を思いつつ、砂を吐かせる水に塩を溶かすたび、海はあんがい塩っ辛いものだと思う。煮ても塩気は残るので、味つけはそのぶん差し引いて加減する。 鍋の海に放ったとたん、ブクブク息を吹き返し、そのうちにゅるりと顔を出す。スーパーで買える活きモノなんて、他にはちょっとないだろう。さっと火を通したなりで、すぐにおいしく食べられるのも、江戸前にしてありがたい。昔から日本人にはなじみの深い貝ながら、近ごろは国産がすっかり減って、手軽な汁の実、お惣菜ともいえなくなった。稀少なうえに質もまた危ぶまれ、ひどい汚れを吐くようなのは、味のほうもそれなりで、みそ汁ひとつこしらえるにも、日本の海が案ぜらる。 砂出ししながら突っつくと閉じこもったり、火にかけるとこらえきれずに次々パカリ口を開く、そんな姿がおもしろいのか、魚ぎらいの子どもでも、殻をつまんでぺろりぺろりと食べている。大人になるころ、きれいなあさりがじゃんじゃん捕れる海が戻っていてほしい。 |
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